「将来は学校の先生になりたい」「子どもに関わる仕事がしたい」そんな漠然とした希望を持ちつつも、いざ進路を考えるときに「教育学部って具体的に何を勉強するの?」「教員免許を取る以外にどんな学びがあるんだろう?」と疑問に思う人も多いことでしょう。
また、教育学部を検討している学生だけでなく、保護者の方にとっても、「教員採用試験の倍率が気になる」「もし先生にならなかったら、就職先はあるの?」といった不安は尽きないものです。
教育学部では、教員になるための知識と技術だけでなく、子どもの発達、教育制度、心理、福祉、ICTを活用した学びまで幅広く学びます。
この記事では、教育学部で何を学ぶのか、主な授業内容、取得を目指せる資格、卒業後の進路を順番に解説します。あわせて、教員採用試験や大学選びで確認したいポイントも紹介します。
- 教育学部では何を学ぶ?主な学びの内容
- 教員養成系:学校の先生になるための実践的スキル
- 教育学系:教育を「学問」として多角的に分析する
- 【コース別】教育学部の主なカリキュラム一覧
- 幼年・初等教育コース(幼稚園・小学校)
- 中等教育コース(中学校・高校)
- 特別支援・養護教諭・心理コース
- 教育学部で取得を目指せる資格
- 教育学部の学生に共通するスケジュール例
- 1〜2年次:教養科目と教職の基礎科目が中心
- 3~4年次:教育実習、採用試験、卒業論文の執筆
- 教育学部卒業後の主な進路
- 教育現場:国公私立学校の教員、児童相談所など
- 公務員:教育委員会、家庭裁判所調査官、一般行政職
- 民間企業:教育ICT、出版社、学習塾、人材紹介、一般企業
- 教育学部が向いている人の特徴
- 教育学部に関するよくある質問
- 教育学部は人間と社会を創る場所
教育学部では何を学ぶ?主な学びの内容
教育学部の学びは、大きく分けると、教員として必要な知識や指導法を学ぶ内容と、教育そのものを学問として考える内容に分けられます。ただし、学部名や学科構成、学びの分け方は大学によって異なります。
まずは自分が教員養成を重視したいのか、教育を広く研究したいのかを意識して読むと理解しやすくなります。
※本記事は2024年4月時点で確認できる文部科学省および各大学の公表資料をもとに作成しています。教育に関する制度や採用日程は変更されることがあるため、最新情報は文部科学省、志望大学、受験先自治体の公式情報をご確認ください。
教員養成系:学校の先生になるための実践的スキル
教員養成系は、その名の通り「教員免許の取得」と「教職への就職」を第一の目標とするコースです。多くの国立大学の教育学部や、私立大学の児童教育学科などがこれに該当します。
- 教職課程(教育原理、教育心理学、教育法規など)
「教育とは何か」という根源的な問いから始まり、子どもの心の動きを理解するための心理学、学校運営を支える法律や制度について学びます。これらは教員として働く上での「土台」となる知識です。 - 教科教育法(算数や国語を「どう教えるか」の技術)
自分がその教科を「知っている」ことと、子どもに「教えられる」ことはまったく別物です。たとえば、小学校の算数で「分数の割り算はなぜ分母と分子をひっくり返すのか」を、子どもが納得できるように説明する技術を研究します。 - 教育実習や介護体験などの現場経験
大学の講義室を飛び出し、実際の学校現場で子どもたちと触れ合います。3年次や4年次におこなわれる教育実習は、大学生活最大の山場。理論通りにいかない現場の難しさと、子どもが「わかった!」と言ってくれた時の喜びを肌で感じる貴重な機会です。
教育学系:教育を「学問」として多角的に分析する
一方、必ずしも教員になることだけを目的とせず、教育という現象を科学的に、あるいは哲学的に分析するのが「教育学系」です。総合大学の文系学部の一つとして設置されていることが多いのが特徴です。
- 教育哲学・教育史(教育のあり方や歴史を問う)
ソクラテスからルソー、現代の思想家まで、人類が「より良い教育」をどう定義してきたかを辿ります。「なぜ人は学ばなければならないのか」という深い問いに向き合います。 - 比較教育学(海外の教育制度との違いを研究)
フィンランドの教育はなぜ成功しているのか? アメリカの格差社会と教育の関係は? 日本の教育を客観視するために、世界各国の事例と比較・分析をおこないます。 - 生涯学習・社会教育(学校以外の学びの場について)
教育は学校の中だけで完結するものではありません。公民館、図書館、博物館、あるいは地域コミュニティや企業内教育など、人が一生を通じて学び続けるための仕組みや支援について学びます。
【コース別】教育学部の主なカリキュラム一覧
教育学部に入学すると、多くの場合、自分が対象とする校種(学校の種類)や専門領域ごとに分かれた「コース」に所属します。それぞれのコースでどのような専門性を磨くのか見ていきましょう。
幼年・初等教育コース(幼稚園・小学校)
このコースの最大の特徴は、「幅広い知識と実技」が求められる点です。
- 全教科の基礎:これまでは、小学校教員は国語から体育まで全教科を一人で担当する“学級担任制”が基本とされてきましたが、近年は高学年を中心に教科担任制も広がりつつあります。
- 子どもの発達心理:幼児期から児童期にかけての急激な心身の発達を詳しく学びます。
- 芸術・体育の実技:ピアノの弾き歌い、絵画・工作、体育の補助技術など、子どもの五感を刺激する活動に必要なスキルを磨きます。
中等教育コース(中学校・高校)
中等教育コースでは、小学校とは対照的に「教科の専門性」が強く求められます。
- 専攻教科の深化:数学専攻なら大学レベルの解析学や代数学、英語専攻なら英米文学や言語学など、教育学以外の専門学部(理学部や文学部など)に近いレベルの知識を修得します。
- 教科教育の高度化:専門知識をいかにして中高生に興味を持たせ、深く理解させるか。ICT機器の活用法や、アクティブ・ラーニングの設計手法などを学びます。
特別支援・養護教諭・心理コース
特定のニーズを持つ子どもたちを支える専門家を目指すコースです。
- 特別支援教育:発達障害、視覚障害、聴覚障害、知的障害などを持つ子ども一人ひとりにあわせた「個別の指導計画」の立て方や、支援技術を学びます。
- 養護教諭(保健室の先生):医学的知識に加え、子どもの心の悩み(不登校やいじめ等)への対応、衛生管理について専門的に学びます。
- 教育心理:スクールカウンセラーの基礎となる知識や、いじめ・虐待といった社会問題に対する心理学的アプローチを研究します。
教育学部で取得を目指せる資格
教育学部で学ぶ特徴の一つは、所定の課程や科目を満たすことで資格の取得を目指せる点です。
- 教員免許状(一種免許状:幼・小・中・高・特別支援)
多くの教育学部では、教員免許取得に必要な教職科目が卒業要件の中に組み込まれていますが、卒業に最低限必要な単位に加えて、教職科目や教育実習などを履修する必要があり、結果として通常より多くの単位を取る学生が多くなります。
※他学部で教員免許を目指す場合は、教職科目が卒業要件とは別枠扱いになるケースもあります。 - 保育士資格(※一部の学科・コース)
幼保連携型認定こども園の普及に伴い、幼稚園教諭免許と保育士資格をあわせて取得できる養成課程を設ける大学が増えてきているとされています。ただし、全国的な推移を示す公的統計は公表されていません。 - 司書教諭・学芸員
学校図書館の専門職や、博物館・美術館で働くための資格です。これらは教員免許にプラスアルファで取得する学生が多いです。 - 社会教育主事・社会福祉主事任用資格
地域の教育行政や、自治体の福祉職として働く際に役立つ資格です。
教育学部の学生に共通するスケジュール例
教育学部では、学部の学びに加えて教職課程や教育実習の準備が必要になることがあり、学期中の予定が詰まりやすい傾向があります。というのも、多くの大学で卒業要件に加えて教職課程の履修が必要になるためです。
教職科目が卒業単位にどこまで含まれるかは大学によって異なるため、履修案内で確認しておきましょう。
1〜2年次:教養科目と教職の基礎科目が中心
この時期は、大学全体の共通科目(語学や教養)に加え、教育学の入門授業を多く履修します。
- 月〜金曜日:1限から4限までびっしり授業が入ることも珍しくありません。
- 放課後:ピアノの練習や、ボランティア活動(地域の学童保育など)に参加し始める学生もいます。
3~4年次:教育実習、採用試験、卒業論文の執筆
3〜4年次には教育実習や教員採用試験の準備が本格化します。実習の時期や採用試験の日程は、大学、校種、自治体によって異なり、3年次から動き始める場合もあります。
- 模擬授業:学生の前で先生役を演じ、お互いに講評し合います。指導案(授業の設計図)の作成に夜通し取り組むこともあります。
- 実習直前:教育実習に行くためのオリエンテーションや手続きが重なり、スケジュール管理が重要になります。
4年次は卒業論文や最終的な進路決定も重なるため、早めの情報収集が重要です。
- 5月〜6月:教育実習の時期や期間は大学や取得する免許種によって異なりますが、小学校教諭を目指すコースでは、3〜4年次のいずれかの学期に2〜4週間程度まとめて実習に出るケースが多いです。
※4年次の5〜6月に3〜4週間というパターンもありますが、秋実習や3年次実施の大学もあります。 - 6月〜8月:教員採用試験の一次試験は、近年は6月中旬ごろに実施する自治体が標準となっており、その後7〜8月にかけて二次試験などがおこなわれるケースもあります。具体的な日程は自治体ごとに異なるため、必ず志望する自治体の最新情報を確認してください。
- 秋以降:4年間の学びの集大成として卒業論文を執筆します。
教育学部卒業後の主な進路
「教育学部に進んだら、必ず先生にならなければならないの?」という疑問を抱く方もいることでしょう。結論からいうと、答えは「いいえ」です。
教育学部で培った「人を育てる力」「伝える力」「分析する力」は、社会のあらゆる場面で求められています。
教育現場:国公私立学校の教員、児童相談所など
教育学部の王道の進路です。正規採用の教員だけでなく、講師としてキャリアをスタートさせたり、児童相談所の専門職員として子どもの福祉に携わったりする道もあります。
公務員:教育委員会、家庭裁判所調査官、一般行政職
自治体の教育行政を担う「教育委員会」や、少年犯罪や離婚問題に関わる「家庭裁判所調査官」など、公権力を持って社会の教育環境を整える仕事です。
民間企業:教育ICT、出版社、学習塾、人材紹介、一般企業
教育学部から民間企業に就職する卒業生も一定数います。
- 教育系企業:ベネッセやリクルートなどの教育事業、学習塾、教材制作。
- 人材・研修:企業内の社員教育や採用担当。
- 一般企業:人にわかりやすく伝える能力によって、営業職や企画職で活躍できます。
教育学部が向いている人の特徴
どのようなタイプが教育学部での学びを謳歌できるのでしょうか。ここでは教育学部に向いている人の特徴を紹介していきます。
- 「教えること」だけでなく「学ぶこと」自体に興味がある
教育とは「一生学び続ける」姿勢を伝える仕事です。自分自身が常に好奇心を持ち、知ることを楽しめる人は、教壇に立っても魅力的な言葉を紡げます。 - 子どもの成長や社会の仕組みをより良くしたいという意欲
目の前の一人の子ども、あるいは社会全体の教育格差など、何かを変えたい、支えたいという「正義感」や「使命感」が大きな原動力になります。 - 多様な価値観を認め、粘り強く人と関われる
教育の現場には、正解が一つではありません。十人十色の背景を持つ子どもや保護者、同僚と向き合うためには、寛容さと根気強さが不可欠です。
教育学部に関するよくある質問
最後に、教育学部に関するよくある質問を紹介します。
教育学部は人間と社会を創る場所
教育学部での4年間は、単なるスキルの習得期間ではありません。
「教える」という行為の裏側には、何千年もかけて人類が積み上げてきた哲学があり、心理学があり、歴史があります。それらを学びながら、教育実習やボランティアで「生身の人間」と真剣に向き合う経験は、教職に就くかどうかにかかわらず、あなたの人生を支える強固なバックボーンとなるでしょう。
教育とは、次世代にバトンを渡す行為であり、未来の社会をデザインする営みです。
あなたがもし、誰かの成長に寄り添いたい、社会を根本から良くしたいと願うなら、教育学部は非常に学びの多い場になるはずです。まずは一歩踏み出し、その扉を叩いてみてください。